策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


朝からずっと歩きっぱなしだったが、ほとんど疲れは感じない。休憩するために入ったカフェを出ると、いつの間にか空が茜色に染まっている。ふたりで歩いてきたシャンゼリゼ通りがライトアップされ、奥に見える凱旋門を壮大に飾っていた。

「そろそろいい時間だな」
「そう、ですね」

楽しい時間ほど、瞬く間に過ぎ去っていく。今日が終わろうとしているという事実が、切なく胸を締めつける。

伊織と過ごせるのは、今日限り。明日の午後の便で千鶴は日本に帰らなくてはならないのだ。

「そんな顔しないで。……勘違いしそうになる」
「えっ?」

今、自分はどんな顔をしているのだろう。両手を頬に当ててみても、わかるはずもない。

「まだ今日は終わらないよ。せっかくだから、本場のフレンチを食べるのはどうかな」
「本場のフレンチ?」
「そう。夕食は具体的に決まってないんだろう? 俺に案内させて」

そして千鶴が連れられてきたのは、フレンチレストランではなく小さなブティックだった。