策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


千鶴の言質をとったと言わんばかりの勢いで、伊織が地下鉄の入口とセーヌ川に掛かる橋を順番に指差す。

なぜここまで親切にしてくれるのかと聞きたかったけれど、まだ彼と過ごせるという喜びが上回った。

「歩いてみたいです」
「いいね。俺もそっちの方がおすすめ」

観光地を歩き回るつもりだったので、足元はスニーカーだ。素直に要望を伝えると、伊織が嬉しそうに微笑んだ。つられて千鶴も笑顔になる。

(会ったばかりなのに、一緒にいるのがこんなにも楽しいなんて)

千鶴は伊織に案内されるまま、パリの街を散策した。

凱旋門までは歩いて一時間ほど。その間に伊織がパリの建物について色々な情報を話してくれたため、あっという間に時間が過ぎていく。さすが外交官だけあって博識で、千鶴は尊敬の念を抱いた。

シャンゼリゼ通りで友人に頼まれた日本未発売のコスメを購入し、最近パリジェンヌに人気だという店でフィナンシェやマカロンをお土産に選ぶ。

その後向かったグラン・パレではアートフェスが行われており、ふたりで感想を言い合いながら見て回った。