〝世界で最も美しく有名な通り〟と言われる場所にひとりで行くと考えると、少しだけ寂しい気持ちが胸をよぎる。
けれど、本来ならランチもエッフェル塔へ登るのもひとりの予定だった。親切な彼と偶然出会ったことで、思いがけず楽しい自由時間になったのだ。
「ありがとうございました。西澤さんが付き合ってくださったおかげでとても楽しかったですし、思う存分写真を撮れました」
胸に芽生えた寂しさに気づかぬ振りをして、笑顔で頭を下げる。
すると、彼から思いがけない提案をされた。
「それなら、今日はこのまま君のアテンド役をしてもいい?」
目を見開く千鶴に、伊織は笑顔で続ける。
「いくら日中とはいえ慣れない土地で女性のひとり歩きは危ないし、この辺の地理には詳しいから俺を連れて行って損はないよ」
ひとりになるのを心細く思っていた千鶴にとって、願ってもない申し出だ。
「それは、とてもありがたいですけど……」
「じゃあ早速行こうか。疲れてるならすぐそこから地下鉄に乗れるし、ここからシャイヨ宮に寄って歩いても行ける」



