同じ景色を見て、感想を共有する。些細なことだけど、ひとりで来るはずだった千鶴にはとても嬉しく感じた。
「でも、想像以上に混んでるな」
「ですね」
チケットを買うために並んでいる時から予想はしていたけれど、身動きが取りにくいほど混んでいるとは思わなかった。
「でも、せっかくの素晴らしい景色を写真に収めずに帰るなんてできません」
千鶴はきょろきょろと周囲を警戒しながらスマホを取り出すと、しっかりとバッグの口を閉めた。
「ははっ、そんなに緊張しなくても」
「だって、さっきの広場よりも人が多いから気をつけないとって」
千鶴なりに学習して警戒しているつもりだったのに、伊織に笑われてしまった。なんとなく拗ねた気持ちになると、彼は余計に頬を緩める。
「ごめん、バカにしたわけじゃないよ。海外ではスリに対する対策や防衛はしすぎるくらいで丁度いい。ただ、警戒してる子猫みたいで可愛いと思っただけ」
「もう! またからかってますね」
「俺はからかってるつもりはないよ。ずっと本心しか言ってない」



