策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


「これじゃ助けてもらったお礼になりません」
「お礼を受け取るほどのことはしてないって言ったろ? それよりほら、着いたよ」

納得できないまま満員電車のような混み具合のエレベーターから降りて展望台へ進むと、どこまでも青い空が目に飛び込んでくる。

「わぁっ……」

眼下には緑が美しいシャン・ド・マルス公園、左に視線を向けるとセーヌ川、グラン・パレ、コンコルド広場、ルーブル美術館も見えた。

「すごい、綺麗」

千鶴は感嘆のため息をつく。他にどう形容したらいいかわからないほど、圧倒的な美しさが広がっていた。

近くに高層の建築物がないため、なににも遮られず、まさにパリの主要な観光名所が一望できる。千鶴は三百メートルの高さを物ともせずに網に手をかけ、美しい景色に見入った。

「圧巻だな。来てよかった」

伊織の呟きを拾い、千鶴は隣に立つ彼を見上げた。自分の心の声が漏れて出てしまったのかと思うほど同意見だったため、千鶴は何度も頷いた。すると、彼は優しく微笑んでくれる。