店内に入り、伊織はハンバーガーのセット、千鶴はベーコンオムレツをそれぞれ選び、牛肉のサラダをシェアしようと決めると、彼がフランス語で注文してくれる。
石造りの建物が立ち並ぶ異国ならではの街並みを見ながら、ふたりはテラス席で食事をとることにした。
テーブルに料理が並べられると、オムレツと一緒に運ばれてきた焼き立てのパンの香りに頬が緩む。
「わぁ、おいしそう! 本当に素敵なお店ですね」
「観光地ではあるけど、地下鉄の駅から少し離れてるから意外と穴場なんだ」
前面の通りには三軒ほど大きなカフェがあり、観光客らしき団体も多くいた。この店は賑わってはいるが混雑はしておらず、観光客よりも現地の人が多いように見える。この街に住んでいる伊織と一緒だからこそ出会えたカフェだ。
「あ、建物の向こうにエッフェル塔の頭が見えますね」
「ここからそんなに遠くないよ。食べ終わったら腹ごなしに歩いて行ってみようか」
「えっ?」
早速食べようとパンをちぎる千鶴の手が止まる。
「昨日行けなかっただろ? 今日は天気がいいし、上まで登ればパリの街を一望できるよ」
もちろんエッフェル塔には行ってみたいし、せっかくなら最上階の展望台まで登ってみたい。



