策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


千鶴が小さく抗議しても、伊織は涼しい顔をしている。長く海外で生活していると、こういうリップサービスがうまくなるのだろうか。

(それとも西澤さんが女性慣れしているだけ?)

そう考えて、千鶴はハッとする。

「今さらですけど、私とふたりで食事しても大丈夫ですか? もし恋人がいらっしゃるのなら――」
「恋人がいたら、こんな風に女性を食事に誘ったりしないよ。それとも、俺がそんな奴に見える?」
「ごめんなさい、そういう意味ではななくて。西澤さんのようにカッコよかったら、恋人くらいいるんじゃないかなって」
「日高さんの目には、俺がカッコよく映ってるんだ」

伊織が嬉しそうに千鶴の顔を覗き込んでくる。

「あっ……」

つい恥ずかしい発言をしてしまったと口元を覆うが、彼は余裕の笑みを浮かべている。

「日高さんこそ、俺とふたりで食事をしたら怒る相手はいないの?」
「そんな人、いませんよ」
「そっか。君の周りにいる男は見る目がないね。俺にとってはラッキーだけど」

なんと返していいかわからず、千鶴は「だから、からかわないでください」と頬を赤く染めるしかできなかった。