(わぁ……素敵!)
すぐにスマホを取り出して、まるでフランス映画に出てきそうな外観を写真に収める。すると、伊織がじっとこちらを見つめているのに気がついた。
(あっ、しまった)
先ほどスリに遭いかけたばかりなのに、また安易にスマホを出したのを咎められていると思った千鶴は、すぐにバッグにしまい込んだ。
「すみません、素敵な外観につい浮かれてしまって」
肩を小さくする千鶴に、伊織はクスッと笑った。
「いや、咎めてるわけじゃない。可愛いなと思って見てただけだよ」
甘く響く低音ボイスに、千鶴の心拍数が一気に跳ね上がる。
「か、からかわないでください」
「からかったつもりはないよ。それにここは人混みでもないし、なにかあっても俺が守るから大丈夫」



