もし彼女が悪事を働こうとしていたのだとしても、まだ未成年にも見える少女が泣くほど貧困に喘いでいると考えるといたたまれない気持ちになる。
だからといって自分になにかできるわけではないけれど、そうじゃなかったと知り、他人事ながら安心した。
「……君、よくお人好しすぎると言われないか?」
呆れた声で苦笑され、千鶴もぎこちない笑みを返す。実は図星だった。
頼まれると断れないし、困っている人を見ると手助けしたくなる。
学生時代には掃除当番や委員会を代わってあげたり、道を尋ねられて案内していたら自分が電車に乗り遅れたりといったことは数知れず。よくも悪くも典型的なお人好しだと家族や友人にも言われてきた。
「いや、でもやっぱり目の前で泣かれたら気になっちゃうじゃないですか。それに言い訳ですけど、スマホを渡す気はなかったんですよ? 私が持ったまま電話口で喋ってもらうつもりで――」
「そんな調子でこのパリにいたら、半日もかからずにスマホも財布もパスポートもなくなってるよ」
「お、恐ろしいことを言わないでください……」
眉を下げると、男性は切れ長の目を細めて笑った。初めて見た彼のにこやかな表情に、千鶴の視線は釘付けになる。こんな風に男性に目を奪われたのは初めての経験だった。



