策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


千鶴は男性の『実行役』というワードに、ハッと息を詰める。

花の都と呼ばれる華やかな街にも、いまだにスラム街のような場所は存在する。移民が多く、スリで生計を立てている貧困層もいるのだと、これも旅行前の下調べで知った。

もしかすると、先ほどの少女もそうなのだろうか。そう考え、ぎゅっと心が痛む。

「さっきの女性を見る限り、スラムの住民という感じではなかったな。たぶん組織化されているスリ集団の末端といったところだろう。軽いバイト感覚で犯罪に加担する若者が増えているのは、どこの国でも抱えている問題だな」

千鶴の脳内を見通したように、男性は小さく呟いて肩を竦めた。

どうやら盗んだ数やものに応じて現金が支払われるような仕組みの犯罪組織がいくつも存在しているらしい。

「ここは治安のいい日本とは違う。嘘泣きに騙されて少しでも隙を見せれば、あっという間にスられる」
「はい、すみません。助けていただき、ありがとうございました」

頭を下げてお礼を伝えると、ほっと肩の力が抜ける。

「でも、よかった。嘘泣きだったのなら、あの女の子は困ってたわけじゃないんですよね」