策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


どうすべきか悩んでいると、みるみるうちに女性の青い瞳に涙が浮かんでくる。

「わっ、な、泣かないで……」

千鶴はなんの確証もないのに目の前の女の子を疑い、泣かせてしまった罪悪感に苛まれた。

(早く連絡しなくちゃいけない用事があるのかもしれないし、私がスマホを持ったまま電話で話してもらえば大丈夫かな)

千鶴がスマホを取り出そうと斜めがけにしていたバッグを開けようとした、その時。

「安易に信じてバッグを開けないで」

聞き慣れた日本語とともに手首をぎゅっと掴まれ、女の子との間に男性が割って入ってきた。

彼は千鶴が見上げるほど背が高く、横顔だけでも造形が美しいのが見て取れる。しかしその表情は険しく、目の前の女の子を鋭く睨みつけていた。

『スマホを落としたのなら、すぐそこに警察署がある。ひとりで行けないようなら付き添ってやろうか』

男性が流暢なフランス語で女の子に声をかける。千鶴にはなにを言っているのかまるでわからなかったが、あまり好意的な物言いではなさそうだ。

『下手な日本語でカモを探しているんだろうが、そんな手はそうそう通じないと覚えておけ』