「嬉しい……。陽茉梨は幸せですね」
「そうだな。こうやって色んな人に愛されて大きくなっていく陽茉梨を、ふたりで大切に育てていこう」
「はい」
伊織の言葉に顔を上げて大きく頷くと、数日前に芽生えた思いを口にした。
「私、夢ができました」
「夢?」
「いつか陽茉梨が大きくなったら、伊織さんとの出会いを話してあげたいんです。ママは『生涯この人だけ』って思える人と結婚したいっていう夢を叶えたんだよって。パパと出会えたおかげで陽茉梨を授かって、とっても幸せだよって伝えたい」
もちろん結婚がすべてではないし、絶対にするべきだと押し付けるつもりはない。
けれど、千鶴が母や兄の幸せな姿を見て憧れたように、陽茉梨にも大切な人と出会う幸せや、愛される喜びを知ってくれたら嬉しい。
「それで、陽茉梨の恋の相談に乗るんです。そう考えたら、なんだかワクワクしちゃって」
すると、伊織は愛しくて仕方ないというように目を細めた。
「想像したらすごく可愛いんだけど、その相談は俺も一緒に聞けるのかな?」
思わぬ質問に首をかしげる。



