策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


やけにきっぱりと否定されたため千鶴が理由を尋ねると、彼は「……相変わらず、自覚がないんだな」と小声で苦笑する。

「エリックはフランス本国でもたびたび女性問題を起こしているようで、目をつけられると厄介なことになりかねません。これから数年は日本に滞在する予定ですし、狙われると店に頻繁に通い、強引に誘ってくる可能性もあるかと」
「そんな……」

痛みを覚えるほどの力で腕を掴まれたことや、帰り際の獲物を狙うかのような視線を思い出し、千鶴は身を竦ませる。

「すみません、怖がらせるつもりはないんです。でも私の婚約者だと偽っておいた方が安全ですし、その方が私としてもあなたを守りやすい。それとも」

伊織はいったん言葉を切ると、じっと千鶴を見据えた。

「あなたにはもう、決まった男性がいますか?」

鋭い眼差しで射抜かれ、ドクンと心臓が大きな音を立てる。