策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


「ミソノの元トップスターなんてびっくりだけど、お会いするのが楽しみです。城之内さんの奥様は、一緒にドイツにも行かれてたんですね。海外生活とか、色々とお話を窺ってみたいです」
「うん、それがいいと思う。年も近いし、同じ立場同士なら気軽に相談できるんじゃないかな」
「私のために色々考えてくれたんですよね。ありがとうございます」

千鶴がにこにこしながら、伊織の腕にきゅっと抱きついてくる。その仕草があまりに可愛らしくて、今すぐに押し倒したいのを必死に堪えなくてはならなかった。

「ここに、俺たちの子がいるんだな」

千鶴のお腹にそっと触れる。見た目にはわからないけれど、彼女の中で生きている命がたしかにあるのだ。

(必ず守る。千鶴も、俺たちの子も)

城之内や雨宮が言っていた通り、外交官を続ける以上、家族には大変な思いをさせる場面があるかもしれない。海外転勤もあるし、以前のようにレセプションの同伴を頼む機会も出てくるだろう。

だからこそ、なにがあっても家族を守り、自分の一生を懸けて幸せにする。伊織を選んだことを後悔させないよう、ありったけの愛情を注ぎ、世界中の誰よりも幸せにするのだ。

改めて決意すると、千鶴が花のようにふわりと微笑む。

「伊織さんのおかげで、ずっと憧れていた夢が現実になりました。私、今すごく幸せです」

心の中で立てた誓いを見透かしたようなタイミングのよさに目を見開く。

そしてにこにこと嬉しそうな千鶴を引き寄せて腕の中に閉じ込めると、伊織は喜びを噛み締めながら彼女にキスを贈った。