「当たり前だろう」
愛する妻が自分の子を宿してくれたのだ。喜ばないはずがない。
強く頷くと、千鶴は安心したように脱力した。
「よかったぁ……!」
ふにゃりと微笑む千鶴の肩をそっと抱き寄せる。
「嬉しいに決まってる。すごく緊張してたのは、俺が喜ばないんじゃないかって不安だったから?」
千鶴が子供を欲しがっているのは、パリの夜に聞いていた。本当の意味で夫婦となった日からずっと、伊織は避妊をしていない。千鶴と話し合ってそう決めたのだ。
妊活というほどカレンダーを気にしていたわけではないが、伊織は三日と置かずに千鶴を抱いている。互いに健康なのであればいずれ妊娠するであろうと思っていたし、伊織もそれを望んでいた。
まさか妊娠を喜ばないかもしれないと不安になっていたなんて、相変わらず想定外すぎる。
「不安というほどじゃないんですけど、私がパリで『早く子供がほしい』って話をしちゃったから……。もし伊織さんがそこまで子供を望んでなくても、言えないんじゃないかなって少し心配で」
伊織は胸にもたれかかる千鶴の頭のてっぺんにキスを落とす。それから頬や額に移り、啄むように唇を奪った。



