一方の城之内は「そうだな。ひとりで溜め込まれるより、悩みを共有できる相手がいた方がいい」と神妙な顔で頷いている。
「実感がこもってるな」
「まぁ。うちも色々あったからな」
伊織が指摘すると、城之内は肩を竦めた。雨宮は「たしかにな」再びくっくと笑いつつ、話を戻す。
「いいと思うぞ。外交官を夫に持つ友人なんて、自分で探そうと思っても探せないからな。この仕事を続ける以上、どうしたって数年スパンで日本と海外を行き来する生活は変えられない。慣れない環境に身を置くストレスもあるだろう。相談でも愚痴でも、話せる相手は多いに越したことはない」
手元のグラスを傾け、最後に小さな声で呟いた。
「俺も、改めて支えてくれる夕妃に感謝しないと」
「あぁ。沙綾や湊人には大変な思いをさせているとは思うが、この仕事を辞める気はないしな」
ふたりと同様、伊織も外交官という職に誇りを持っている。それを理解してくれる千鶴には感謝しかない。
(なんだか、無性に千鶴の顔が見たくなったな)
そうしてそれぞれが愛する妻に思いを馳せれば、自ずとお開きにしようという雰囲気になる。
近い内に予定を合わせて六人で食事をしようと約束して、久しぶりの同期会はたった一時間程で解散となった。



