策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


「お母さんっ?」
「だって女癖の悪い放蕩息子から千鶴を守るために、西澤さんは嘘をついてくださったのでしょう? それなのに彼をひとりで行かせたら、西澤さんが嘘つきだって言われてしまうじゃない」
「う……」

フランス大使の息子に対して酷い言い草だが、たしかにその通りだ。助けてくれた伊織に恥をかかせたいわけではない。

けれど〝フランス大使公邸のレセプション〟というものがいったいなんの集まりなのか、どんな場所でなにをするのか想像もつかない。まして伊織の婚約者として同行するだなんて、そんな大役が自分に務まるなんて到底思えない。

(しかも明後日だなんて、時間もない……)

頭の中が『ないない尽くし』の千鶴が口ごもると、伊織が畳み掛けるように話しだす。

「私の立場よりも、千鶴さんの安全のためです」
「そこまでしなくても、エリックさんだって私のことなんて忘れてるんじゃないでしょうか」
「いえ、それはないと思います」