むしろ、早く触れてほしい。その思いから、千鶴はいつになく積極的に身体を寄せる。
「可愛い。もう欲しくなった?」
伊織はベッドルームの照明を絞ると、シャツを脱ぎ捨てて上半身を晒した。
何度も目にしているけれど、見惚れるほど均整の取れた肉体美だ。細身だけれどしっかり筋肉がついていて、千鶴の身体とは比べ物にならないほど硬質で男性的な魅力に溢れている。
うっとりと見蕩れているといると、彼が困ったように微笑んだ。
「そんな顔で見つめられると、甘やかしたいって言っておきながら優しくできなくなりそうだ」
自分がどんな顔をしているのかわからないけれど、千鶴はそれでもいいと頷いた。
「伊織さんの、好きなようにしてください」
「こら。だからそういうことを――」
「私に触れるのは、伊織さんだけ。これまでも、これからも、ずっと。だから、いいんです」
それに、伊織はいつだって優しいと千鶴は知っている。多少意地悪だったり、快感と羞恥に泣かされたりしたことはあれど、彼が優しくなかったことなど出会ってから一度もない。
きっぱりと言い切ると、伊織の瞳の奥に獲物を見据えるようなギラリとした光が宿る。
「……今夜は、本当に止められないけど。それでもいい?」



