ふかふかのソファは大人がふたりで寝転んでも十分なほどの大きさがあるけれど、ここは高級ホテルの最上階の一室。そんな部屋のソファでこのまま続けるなんて、落ち着かないことこの上ない。
「じゃあ、やめる?」
「えっ」
「千鶴はどうしたいの?」
わかっているくせに、そんな風に言うなんて意地悪だ。
ほぼキスだけで高められた身体は、もう引き返せないほどに伊織を欲している。そんな風に千鶴の身体を作り変えたのは、紛れもなく目の前の夫だ。
濡れた唇を尖らせて不満げな顔をしても、伊織は黙って千鶴の言葉を待っている。
「……ベッドに、連れて行ってください」
「ははっ、可愛い」
「もう、そういうのずるいですっ」
「俺をどこまでも惚れさせる、可愛い千鶴が悪いんだよ」
羞恥に顔を覆った千鶴を軽々と抱き上げ、伊織は意気揚々と寝室へ歩いていく。ベッドに千鶴を座らせると、自身も隣に腰を下ろした。
先ほどの続きのように、どちらからともなくキスをする。互いの唇を食み、甘く噛み、舌を絡め合う。
徐々に激しくなる口づけに苦しくなるけれど、やめてほしいとは思わなかった。



