策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


「伊織さんがひだかを守ってくれたのは事実です。それにあの人がこのままダニエルさんの秘書を続けていたら、また問題を起こしていたかもしれません。それを阻止したかったんですよね?」
「ダニエル大使は親日家なんだ。彼が失脚するのは、俺たち日本の外交官にとっても痛手だからね」

それだけではない。エリックの今日の言動を見ても、過去の過ちを反省している様子はなかった。彼の本性が暴かれないままでは、千鶴のように嫌な思いをする女性が増えてしまうかもしれない。伊織はそれを防いだのだ。

「伊織さんがとった行動は間違っていません。だから、幻滅する理由なんてひとつもありません」

きっぱりと言い切る千鶴を見上げた伊織は、食い入るようにこちらを見つめている。

「それに、私は囮にされたなんて思ってないですよ? 自分の実家のことですし、伊織さんが守ってくれるってわかってたから少しも怖くなかった」

まだレビューが消えたわけではないけれど、ダニエルがすぐに対処してくれると言っていたし、すべてエリックが書かせていたのならば個人を特定する手間もなく時間はかからないはずだ。解決の糸口が掴めたのは、間違いなく伊織のおかげである。

「これで両親にも、常連のお客様にも安心してもらえます。本当にありがとうございました」

そう言って微笑むと、伊織も「頭を撫でてもらうなんていつぶりだろう」と、ようやくいつもの笑みを見せた。

「今、めちゃくちゃ千鶴に惚れ直した」
「えっ?」
「君のその優しさも、心の清らかさも、強さも、すごく愛おしい」