改めて自分の言動を振り返ると、たしかに鈍感だと言われても仕方がない気がする。申し訳なくて声が出ない千鶴を見て、伊織はやわらかく微笑んだ。
「でも、そういう君に惹かれたんだ。千鶴の隣にいると心があったかくなる。誰にでも優しい君を、俺がめちゃくちゃに甘やかして幸せにしたい。そう思ったからプロポーズしたんだ」
「伊織さん……」
「好きだよ、千鶴」
伊織の真摯な告白に、千鶴の瞳からぽろりと涙が零れる。
「私も、伊織さんが好きです」
するりと言葉が口から出た。勇気がなくて伝えられなかったパリの夜から、ずっと言いたかった。
「結婚を提案された時、驚いたけど嬉しかったんです。初めて好きになった人と結婚するのに憧れてたから」
「パリでその話を聞いて、千鶴にとって『生涯ただひとりの男』になりたくて必死だった。離れていた半年間、合コンやマッチングアプリなんかで他の男を見つけてたらって考えたら気が気じゃなくて」
「他の人なんて考えられなかったです。パリで助けてもらってからずっと、伊織さんを忘れられなかった。私の夢を叶えてくれて、ありがとうございます」



