策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


言いたいことも、躊躇っている理由すら見透かしているような伊織の笑顔に、千鶴はこくんと喉を鳴らす。緊張で心臓が破れそうだったが、意を決して口を開いた。

「もしかして、伊織さんは私のこと、好き、なんですか……?」

頬だけではなく、首筋や耳まで真っ赤にしながら尋ねた。恥ずかしくてたまらないのに、じっとこちらを見つめる伊織から視線が外せない。

すると、彼の腕が伸びてきて、ぎゅうっと抱きしめられる。

「はは、やっと伝わった」

絞り出すように呟いた伊織は喜びに満ちている。痛いくらいに力強い抱擁は、彼の想いの大きさを表しているかのようだった。

「千鶴が好きだよ。パリで出会ってからずっと、俺は君しか見えてない。千鶴は全然気づいてくれなかったけど」

抱きしめられたまま拗ねた口調で咎められ、困惑しながらもう一度尋ねた。