エリックが千鶴について母にあれこれ尋ねていたと聞いて不安になったことも、恵梨香に理不尽な不満をぶつけられて嫌な気持ちになったことも、包み隠さずに話しても受け止めてくれるに違いない。
「ほ、本当は、エリックさんが店の前で何度も私の名前を呼んでいたと聞いて、怖かったです」
「うん」
「父や兄が心を込めて作った料理をわざとひっくり返すなんて、お客様でも許せなかった……!」
「そうだね、当たり前だ」
千鶴が胸にしまい込んでいた感情を吐き出している間中、伊織はずっと相槌を打ちながら肩を抱いていた。
絶対的な味方である夫が、こうしてそばにいてくれる。決して否定せず、すべてを受け止めてもらえる安心感に、千鶴の心がゆっくりと凪いでいく。
徐々にスッキリして落ち着いてくると、伊織の労るような眼差しに気がついた。
その眼差しや肩を抱き寄せる大きな手から、千鶴を思い遣り、心配しているのが伝わってくる。
(こうやって大切にされるたびに、どんどん好きになっていく)



