「千鶴をターゲットに嫌がらせをされたのなら、フォローに入ってもらって正解だよ。情けなくなんてない。君のことだから、自分が頭を下げれば丸く収まるって考えてたんじゃない?」
「それは……」
図星をさされ視線を泳がせると、伊織は逃さないとばかりに千鶴の両方の頬を大きな手で包み込む。
「千鶴は店に来た全員に最高のおもてなしをしなくちゃいけないと思ってるだろう? でも、そうじゃない。紹介制をとってるひだかにも、悪意のある人間が来ることもある。エリックの件でもわかっただろう」
「……はい」
厳しい声音は、初めて出会った時を彷彿とさせた。強い口調でも怖いと思わないのは、頬に触れる彼の手があたたかいから。
「誰にでも優しくて真面目なのは千鶴の美点だし、店での仕事に誇りを持っているのはわかってる。だからといって自分を犠牲にする必要はないんだ。そんなことをしたら、千鶴を大切に思ってる人が辛い思いをする」
伊織の言葉にハッとする。『もっと早く止めに入ってやればよかった』と辛そうな表情の両親が頭に浮かんだ。



