策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


千鶴は愚痴っぽくならないよう気をつけながら、わざとぶつかって料理を台なしにする嫌がらせを受けたことや、千鶴自身を悪く言われたこと、なんとか自分で対処したかったのに最終的にはダニエルや父にフォローされてしまったことを話した。

終始聞き役に徹していた伊織が、途端に険しい顔に変わる。

「嫌がらせをした客は、千鶴を『外交官の妻』だと知ってたの?」
「え?」
「仕事を辞めて俺をサポートすべきだって思ったのは、その客になにか言われたんだろう? もしかして、レセプションで会った人?」

鋭い指摘に、千鶴は目を瞠った。

けれど従業員である千鶴が客の情報を漏らすわけにはいかず、それ以上は言えないと口を噤んだ。

「……それはこっちで調べるか」

伊織は聞こえないほど小さな声で呟くと、千鶴の顔を覗き込む。