策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


(いやだ、なんだかすごいネガティブになってる)

身体も心も疲れていると、思考が悪い方へと傾いていってしまうらしい。

伊織は、千鶴がひだかでの仕事を大切に思っているのを知っている。結婚後も仕事を続けていいと言ってくれたのは、彼の優しさに他ならないと頭ではわかっているのに。

恵梨香の辛辣な言葉に惑い、ここにきて伊織に愛されて結婚したわけではないという事実が胸を刺し貫く。

(彼に愛される努力をすればいいって、結婚すると決めたのは私なのに……)

次から次へと被害妄想が浮かんできて、泣くつもりなんて少しもなかったのに、じわりと涙が滲む。

伊織がこちらを凝視しているのに気づき、千鶴は慌てて立ち上がった。

「ご、ごめんなさい。なんか私、今日はちょっと変みたいで……先に休みますね」

自分でも涙の意味がわからないのに、突然妻に泣かれた伊織はもっと困惑するに違いない。