「なんか、元気ない?」
普段通り振る舞っていたはずなのに、なぜか彼には気落ちしているのがバレているようだ。
そこで、千鶴は気になっていた疑問のひとつを尋ねてみることにした。
「あの……外交官の妻として、なにかお手伝いすることはありますか?」
伊織と結婚したものの、千鶴は彼の仕事について詳しく理解しているわけではない。欧州局の西欧課に所属し、フランスやモナコ、ベルギーなど、該当諸国との関係構築に携わっていると聞いたけれど、どんな業務で具体的になにをしているのかは知らないままだ。
レセプションへ同行したのは、エリックに婚約者がいると思わせるために行った一度きり。それ以来、伊織から一緒に来てほしいと言われたことはないけれど、もっとそういう場に出るべきなのだろうか。
すると、伊織は驚いた表情で尋ね返してくる。
「突然どうしたの?」
「いえ。本来なら、仕事を辞めて伊織さんをサポートするべきなのかなって……」
「今日はダニエル大使がひだかに行ったらしいね。なにか言われた?」



