策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


けれど彼は千鶴の理性と身体を蕩かすだけで、決して自分の欲求を満たそうとはしない。

触れ合う肌の温度も、伝わる鼓動も、熱っぽい眼差しも、千鶴を欲してくれているように思えて期待するけれど、また先週も空振りに終わった。

なぜ最後まで抱いてくれないのかと尋ねてみたいけれど、なかなか勇気が出ない。理由の見当がつかないだけに怖くて一歩が踏み出せないまま時間が過ぎ、焦りと不安、そして伊織に抱かれたいという淫らに思える欲求だけが募っていく。そんな自分が情けない。

(明日は土曜日だけど、どうなるだろう……)

考え込んでいると、玄関が開く音がした。心配をかけたくなくて、千鶴は笑顔で伊織を出迎える。

「おかえりなさい。お仕事お疲れ様でした」
「ただいま。千鶴もお疲れ様」

食事は互いに済ませているため、順番にお風呂に入り寝支度を整えた。髪を乾かし終えてリビングで寛いでいると、隣に座る伊織が首をかしげた。