策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


そう言って、ダニエルは千鶴に柔らかな笑みを向けた。言外に恵梨香の振る舞いが人として恥ずかしいと含ませた彼は、先ほどまでとは別人のように鋭い眼差しを恵梨香に投げる。

それに怯みつつも反論しそうな彼女を止めたのは、これまで娘の暴走にも我関せずと隣で飲み食いしていた嶋田だった。

彼はダニエルの顔を見て真っ青になっている。娘と違い、以前出席したレセプションの主催者を思い出したようだ。

「も、申し訳ありません! 二度とこちらには顔を出させませんので!」
「ちょっと……パパ、なによ!」
「いいから、来なさい」

嶋田は慌てて財布から一万円札を二枚抜いてテーブルへ置くと、恵梨香の腕を引きずるようにして店を出ていった。

嵐が過ぎ去った直後のようにしんと静まり返った店内で、大将である父が頭を下げて謝罪する。

「みなさま、食事中にお騒がせして大変申し訳ありません」

千鶴もすぐに父に倣って腰を折る。自分のせいでひだかの空気を乱してしまい、お客様に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。