他のテーブル席に座っている客の誰もが頷き、嶋田父娘に冷ややかな眼差しを送っている。
「なっ、なによ……」
反論できなくなったのか、恵梨香はグッと下唇を噛んで黙り込む。
すると、いつも寡黙な父がカウンターから出てくるなり出入り口の扉を開け、恵梨香に向かって「お代は結構です」と告げた。
「この店は、客に出て行けと言うの?!」
「私にも料理を提供する際にわざとぶつかったように見えましたし、従業員に対する暴言は看過できません。改めていただけないのであれば、こちらも相応の対応をさせていただきます」
「な……っ」
想定外の展開に激昂する恵梨香へ追い打ちをかけるように、ダニエルは「あぁ、それから」と続ける。
「僕の経験談だけど、外交官の妻に望むのは仕事の手伝いではなくて、人として恥ずかしくない振る舞いをしてくれることだけだね。彼女は満点だと思うよ」



