悪意に満ちた見下すような視線や、わざとぶつかって料理の提供の邪魔をする嫌がらせの原因は、どうやら伊織と千鶴が結婚したことにあるらしい。
きっと伊織と親しくなりたいと考えていたのだろう。あのレセプションの日も、嶋田の提案を伊織がすげなく断ったあと、物凄い形相で睨みつけられた記憶がある。
それで終わるはずだったのに、こうして偶然再会したことで怒りが再熱し、ここぞとばかりに嫌みをぶつけているのだと察せられた。
だからといって関係のない店で騒がれては堪らない。早く彼女の怒りを鎮めないと、自分のせいで他のお客様の迷惑となってしまう。
明らかな敵意を向けてくる相手と対峙し、千鶴はなんとかしなくてはと焦っていた。
(どうしたら落ち着いてくれるだろう……)
クレームの対処法としては、まず相手の話を聞き、謝罪をして、解決策を探るのが定石だ。
けれど料理をひっくり返してしまったことに対してはともかく、伊織と結婚した事実について千鶴が謝罪するのはおかしい。
それでもこのままでは収拾がつかないと、千鶴が再び頭を下げようとしたその時。



