策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


嶋田がやれやれと立ち上がりかけた瞬間、恵梨香が口を開く。

「ろくな接客も出来ないあなたが、どうして優秀な外交官の妻に収まっているの?」

突然、脈絡のない話が飛び出し、千鶴は目をまたたかせた。

「西澤家の長男が帰国したと知ってレセプションへ出向いたら、ぱっとしない女性を連れていて驚いたわ。いったいどんな手を使って取り入ったのかしら」

悪意にまみれた言葉を浴びせられ、千鶴は息をのんだ。

レセプションでは父親の後ろに控えていただけで言葉を発しなかったが、余程腹に据えかねていたらしい。

「取り入ったなんて、そんな――」
「だいたい外交官の妻になったのに社交場にも出ないで実家の手伝いをしているなんて、恥ずかしいと思わないの? 夫の立場や仕事を理解できない妻なんて、単なる役立たずじゃない。あなたよりも、優秀な私の方がよっぽど西澤家の嫁に相応しかったのに」

店中に響く声で『役立たず』と中傷され、千鶴は言葉を詰まらせる。