策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


「申し訳ございません」

咄嗟に謝り、ふたりに怪我がないかを確認する。幸い天ぷらが盆やテーブルの上に散らばってしまっただけで、皿が割れたり服が汚れたりはしていない。

「ちょっと! どうしてくれるのよ!」

店中に響く甲高い声で責められ、千鶴は頭を下げた。

「大変失礼いたしました。すぐに新しいお料理をご用意いたします」
「最低。顔や手に当たったら火傷するところだったじゃない!」
「申し訳ございません」

頭を下げながら、理不尽さに泣きそうになるのをぐっと堪えた。鈍感で人を疑うのが苦手な千鶴にも分かる。恵梨香はわざと肘をぶつけ、因縁をつけてきているのだと。

父や兄が心を込めて作った料理をわざとひっくり返すなんて、いくらなんでも酷すぎる。けれど、それを自分から指摘するのは躊躇われた。証拠がない限り水掛け論だし、店内での揉め事は絶対に避けたい。