策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


千鶴が二、三回しゃぶしゃぶして見せると、ダニエルは「なるほど、このくらいだね」と楽しそうな様子で頷く。彼がひだかの料理を気に入ってくれた様子を見て、普段は仏頂面の父の口元にも笑みが浮かんでいる。

ちょうどその頃、ある予約客が来店した。

「嶋田様ですね。お待ちしておりました」

やって来たのは、見覚えのある父娘だった。

(たしか、レセプションで伊織さんに娘を紹介したいと最後まで食い下がってた……)

父親の隣にいる女性は千鶴に気づくと目を見開き、不愉快さを隠さずに「最悪」と短く息を吐き出した。

(恵梨香さん、だったっけ。私のこと覚えてるみたい……)

千鶴は内心困惑しつつも気付かない振りで嶋田父娘をテーブル席へと案内した。メニューを渡し、いつも通り笑顔で酒や料理について説明する。