策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


「どんなお店だって全員に百パーセント満足してもらうなんて難しいよ。私も接客が悪いなんて言われないようにもっと頑張るから、お兄ちゃんも頑張って」

そう准一を励まし、千鶴はその日も精一杯のおもてなしで客を迎えた。

そんなことがあった数日後。

夜の八時を少し過ぎた頃、フランス大使ダニエルが数名のボディガードのみを連れて来店した。一瞬、エリックもいるのかと身構えたけれど、どうやら今日は同行していないらしい。

彼らが伊織に連れられて初めてひだかを訪れてから数週間後、エリックは一度予約もなしに数人の友人を連れて来店し、店の入口で千鶴はいるか、個室を用意しろ、などと騒ぎ立てた。

土曜日だったため千鶴は不在だったが、事情を知っている母も『予約がいっぱいだからとお断りしたけれど、なんだか嫌な感じだったわ』と顔を顰めていた。

それを伊織に伝えるべきか迷ったものの、心配をかけたくなかったし、特になにか起きたわけではないので、結局話していない。