策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


たしかに、ひだかの客単価は決して安くないし、メニューには値段を書いていない。その日の仕入れによって変動するためだ。

価格に見合うだけの料理や酒を提供している自負はあるが、そもそも一見さんお断りという暗黙のルールがあるため、馴染みがなければ高慢な商売をしていると捉える人もいると理解している。

けれど、それにも理由がある。

店側はやって来た客をもてなすのが使命であり、最大限のおもてなしをしたいと考えている。

けれど初来店の客の好みを把握するのは難しく、どんな人となりかもわからない。それに万が一騒ぎを起こし、常連客の居心地を悪くされては困る。

そういった事態を考慮し、ひとりひとりの客に対して真心のこもった接客をするため、基本的に紹介制を取っているのだ。

(満足してもらえなかったのは残念だけど、私たちがこのお客様にひだかのよさを伝えきれなかっただけ)

千鶴は口角を上げて兄の背中をとんとんと叩いた。