お礼とともに重ねた手をぎゅっと握られる。ふたりで出かける時には、いつもこうして手を繋いでいるのが定番となった。
最初は照れてしまってドキドキしっぱなしだったけれど、近頃では彼の大きな手に包まれると安心する。
千鶴は少し勇気を出して、握られた手のひらをくるんと返す。すると、その意図を察したように伊織は指を絡めて握り直してくれた。
その些細な触れ合いに、心が大きくときめく。
(少しずつ、本当の夫婦に近づいていると思っていいよね……?)
初めて家族以外と暮らす千鶴だが、伊織との生活にストレスは一切ない。
価値観が似ているのか意見がぶつかることがそもそも少なく、たまに気になるところがあればふたりで話し合い、小さなルールを設けたりもする。それがとても心地よく、そして少しくすぐったい。
伊織は間違いなくいい夫だ。
千鶴が仕事を続けることにも寛容だし、多少家事が疎かになったところで文句を言われたことは一度もない。それどころか『千鶴も働いているんだから、家事は外注したらいい』と言ってくれる。



