「あ、や、伊織、さん……」
「大丈夫。怖くないから、そのまま」
初めての感覚なのか、高みに駆け上ろうとする身体とは裏腹に、千鶴が助けを求めるように縋りついてくる。
伊織は彼女を導く手を止めないまま、小刻みに震える身体をぎゅっと抱きしめた。
「千鶴」
『好きだ』『愛してる』と言葉にするのは簡単だ。
けれどきっと、今の千鶴には響かない。
『結婚したから気を遣っている』『妻に対するリップサービス』、そんな風に受け取られてしまっては困る。『ベッドの中の睦言』と流されてしまうのは、もっと耐え難い。
だからこそ、伊織は行動でどれだけ千鶴を愛しているのかを伝えていくしかない。いつか彼女が伊織の本心に気付いてくれるまで、ただひたすら行動で示すつもりだ。



