策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす


卑下しているわけではなく、恋愛経験が少ないゆえに、自分が異性からどう思われるのかを理解していないらしい。

エッフェル塔に一緒にのぼると言った時も、レセプション後にプロポーズした時も、千鶴は伊織の言葉を額面通りに受け取らず、彼女の中のよくわからない方程式で明後日の方向の答えを弾き出す。

なかなか本心が伝わらずにもどかしいのに、そんな天然で鈍感な彼女を愛おしく感じてしまうのだからお手上げ状態だ。

千鶴は伊織がこの結婚にメリットを見出して申し込んだものだと思っているようだが、そんなものはない。

ただフランスで出会った半年前のあの日から、ずっと好きで仕方がないだけだ。

「千鶴」

愛しい妻の名前を呼び、真っ赤に熟れた唇を何度も啄む。

キスだけで蕩けた顔を見せる彼女が可愛くて、もっと先へ進みたいという凶暴な欲が迫り上がってくる。