「……おしゃれすぎない?」
予約してもらったレストランに着いた瞬間、私は立ち尽くした。
煌びやかなシャンデリア、静かに流れるクラシック音楽、そして上品な装いの客たち……。
「……完全に場違いじゃん」
「大丈夫ですよ、先生もちゃんとドレスアップしてますし」
「それ、橘が無理やり着せたんじゃん……」
「似合ってるので問題なしです」
軽く流してくる橘に、私はため息をつくしかなかった。
(なんでこんな高級なとこ……絶対気疲れする……)
そんなことを考えながら席に案内されると、テーブルにはキャンドルが灯されていた。
(……え? なんかこれ、雰囲気よすぎない??)
「……これって、まるでデートみたいじゃん」
「何か言いました?」
「な、なんでもない!!」
橘が怪訝そうに私を見る。やばい、無意識に口に出てた……。
「先生、緊張してます?」
「……してない」
「顔、赤いですよ?」
「!!」
「もしかして、ワイン一口で酔いました?」
「酔ってない!!」
「ならいいですけど」
(こいつ、完全にからかってる……!!)
恥ずかしくて視線を逸らすと、ちょうど隣の席のカップルが楽しそうに笑い合っていた。
(……まるで、本当にデートみたい)
なんでだろう。食事をするだけなのに、やけに意識してしまう。
それは、たぶん——



