「……はぁぁ……」

ホテルの部屋に着いて、ベッドに倒れ込む。時差ボケと疲れで、もう動きたくない。

「先生、大丈夫ですか?」

「……寝る」

「その前に、食事行きましょうよ」

「無理……」

「でも、何も食べないのはよくないですよ」

「……ルームサービス……」

「せっかくのフランスですよ? ちゃんとレストランで食べましょう」

「……橘が全部注文してくれるなら、考える」

「わかりました」

「え、マジで?」

「当然です。先生の担当ですから」

さらっと言う橘を見て、思わずドキッとする。

「……もう、好きにして」

「じゃあ、ディナーの予約取りますね」

橘は軽く笑って、電話を取り出した。

(……こいつ、こういうとこだけはスマートなんだよな……)

疲れてるはずなのに、なぜか心臓の音だけは無駄に速くなっていた。