「先生、ヤバいです」

「何がヤバいの!?」

「ネットニュース、先生の記事で埋まってますよ」

「……はぁ!?」

橘がスマホを見せてくる。そこには——

『エロ漫画家・椎名先生、まさかの実写化オファー!?』
『担当編集・橘氏との関係は!? 熱愛説に迫る!』
『椎名先生、取材の仕方が独特すぎると話題』

「なんで全部変な方向にいってるの!?」

私は叫びながら頭を抱えた。

「いや、実写化の話は本当ですよ。昨日、出版社に映画会社から問い合わせがきました」

「えええええええ!?」

「主演候補も何人か挙がってるみたいですね」

「ちょっと待って、どんなキャスティングなの!? というか、本当に実写化する気なの!?」

「まぁ、先生がOK出せば進むんじゃないですか?」

「無理無理無理!!!」

そんなの絶対耐えられない!!!

「あと、“椎名先生の恋愛観に迫る” って対談企画のオファーもきてますね」

「は!? なんで私が恋愛語らなきゃいけないの!??」

「そりゃあ、“実体験をもとにしたリアルな描写” って言っちゃいましたからね」

「だからそれは誤解だってば!!!」

私は机をバンバン叩いた。

「まぁまぁ、これも人気作家の宿命ですよ」

「何その適当な慰め方!!」

私はもう、どこにも逃げ場がなかった——。