ついにやってきてしまった……テレビ収録当日。

私は今、楽屋で深呼吸を繰り返している。

「はぁ……はぁ……緊張する……」

「先生、そんなにガチガチにならなくても大丈夫ですよ」

隣で橘がやけにリラックスした様子でお茶を飲んでいる。

「あんたが一番の原因なんだけど!?」

「えぇ……僕、何もしてませんよ?」

「橘が仕込んだに決まってるんだよ!!! こんな話、誰が持ってくるんだ!!」

「出版社です」

「出版社ァァァァ!!!」

もはや出版社に対する恨みが募る一方だが、今さら逃げることもできない。

「椎名先生、そろそろスタジオ入りお願いしまーす」

ついにスタッフが呼びに来てしまった……。

「……はぁ……」

「先生、笑顔ですよ。全国放送ですよ」

「橘が一番笑ってるんだよ!!」

私は橘のニヤついた顔を睨みつつ、重い足取りでスタジオへ向かった。