橘は手元のタブレットを見せてくる。

《椎名先生の描くシーン、リアルで最高!!》
《色気がありすぎて、読んでてドキドキが止まらない》
《続編早く!! もっと!!》

「……」

「先生、顔赤いですよ」

「……うるさい……」

確かに、読者が楽しんでくれるのは嬉しい。嬉しいけど……!!

「先生、次はどんなシーンを描くんです?」

「そんなの、これから考える……」

「なるほど。では、また取材ですね」

「取材って……」

橘はわざとらしく考える素振りを見せた。

「先生の作品は、実にリアルな描写が魅力ですからね」

「……だから?」

「もっと実践的な取材が必要では?」

「……ちょっと待って?」

「例えば、実際に試してみるとか」

「~~~っ!!!!」

「冗談ですよ」

「……もう帰って……」

私は机に突っ伏した。

「まあまあ、冗談はさておき、先生の続編、楽しみにしてますよ」

橘は涼しい顔でそう言い残し、部屋を出て行った。

……こいつ、本当にもう……!!!