先生、それは取材ですか?

「先生、どうしました? 急に黙って」

「……橘ってさ、ほんとに人を好きになったことないんじゃない?」

ポロッと出た言葉に、自分で驚く。

「……そうかもしれないですね」

橘は特に否定も肯定もせず、ただ穏やかに笑った。

なんか、ちょっと寂しそうな笑い方だった。

「……じゃあ、次に好きになる人は、ちゃんと本気になれるといいね」

そう言うと、橘はふっと目を細めて、私をじっと見た。

「……そうですね」

「な、なに?」

「先生、僕のこと結構気にしてくれますよね」

「べ、別に……!」

「じゃあ、その”取材”、もうちょっと続けます?」

「は……?」

「先生と一緒なら、“本気”になれるかも」

「っ!!??」

心臓が跳ねた。

「……なんて」

「お、お前ほんっとにムカつく!!!!」

「ははは、冗談ですよ」

橘はケラケラ笑いながら歩いていく。