「……まじで無理だった……」
「いや、先生叫びすぎですよ。スタッフさん笑ってましたよ?」
「だ、だって!! 橘が脅かすから!!」
「いや~、先生が反応いいからつい」
「ほんっとにムカつく!!!!」
バンッと橘の肩を叩くと、「痛い痛い」と笑いながら避けられた。
「まあまあ、最後に観覧車乗って落ち着きましょう」
「……ほんと、付き合いきれない……」
ため息をつきながら観覧車に乗ると、橘がふと真面目な顔になる。
「……楽しかったですか?」
「え?」
「今日の”取材”」
「……」
――楽しくなかった、なんて言えるわけない。
「……まあ、悪くはなかった……かも」
小さく呟くと、橘は満足げに笑った。
「じゃあ、また取材しましょう」
「えっ」
「次は、水族館とかどうです?」
「ま、またやるの!?」
「もちろん。先生の作品のためですから」
「……ほんっとにもう……」
「でも、嬉しいでしょ?」
ニヤッと笑う橘を見て、私はもう何も言えなかった。



