「嘘じゃないですよ。だって、恋愛描写の説得力を上げるには、実際に体験してみるのが一番じゃないですか?」

「で、でも……っ」

「先生、僕とデートするの嫌です?」

「っ……!!」

妙に落ち着いた声でそう言われて、なぜか言葉が詰まる。

「別に、僕としては先生がいいって言うならやりますけど?」

「……っ」

――なんか、負けた気がする。

「……べ、別に嫌とか言ってないけど……」

「じゃあ決まりですね」

橘がニッと笑う。

「……もしかして、乗せられた?」

「さあ?」

――こうして、私の”取材”と称した謎のデートが始まることになった。