「……本当に?」
「嘘つくように見えます?」
「……わかんない」
「ひど」
拗ねたように言いながら、橘はペンをくるくる回す。
「ま、でも。先生がそんなに僕のこと好きなら、仕方ないですね」
「はぁ!?!?」
「だって”寂しい”とか”いなくなるなんて嫌”とか……これ、もう告白でしょ」
「ち、違う!!」
「え、違うんですか? じゃあ僕、転職……」
「だ、だから違うってば!!!」
「はいはい、わかりましたー」
ニヤニヤしながら原稿をめくる橘に、私は思いっきり原稿用紙を投げつけた。
「もう!! ほんっとにムカつく!!!」
「え、ちょっと! 先生、暴力はよくないですよ!」
「うるさい!!!」
バサバサと散らばる原稿を拾いながら、橘は楽しそうに笑っている。
その顔を見て、思う。
――やっぱり、こいつがいなくなるなんて、絶対に嫌だ。



