「……ゴホッ……ゴホッ……」

朝から喉が痛い。

「……やばい、これ絶対熱ある……」

昨日のキス事件のせいで、私はほぼ一睡もできなかった。
その結果、寝不足+ストレス+冷えで完全に風邪をひいた。

「橘のせいだ……絶対あいつのせい……」

そう思いながら布団にくるまっていると、

ピンポーン

「……は?」

こんな早朝に誰? と思いながら玄関を開けると――

「先生、おはようございます」

橘だった。

「……は?」

「先生、絶対風邪ひいてると思ったので、差し入れ持ってきました」

「……なんで分かるの……」

「先生、めちゃくちゃ単純なんで」

「うるさい」

「ほら、ポカリとおかゆ買ってきましたよ」

橘が袋を差し出す。

「……普通に助かる……」

素直に受け取り、リビングに戻る。

「先生、ちゃんと布団に入ってください」

「……うるさいな……」

私は渋々布団に潜る。

「……ん?」

「どうしました?」

「なんか、めちゃくちゃ頭撫でられてるんだけど」

「風邪の時は、優しくしてもらうのが一番ですよ」

「……」

撫でられる感触が気持ちよくて、意識が遠のいていく。

「先生、ちゃんと寝てくださいね」

「……うるさ……」

そう呟いて、私は眠りについた。