「……はぁ……」 私は、限界だった。 橘が来てから、進捗はむしろ悪化している。 そりゃそうだ。隣に取材対象そのものがいたら、意識してまともに描けるわけがない。 「先生、集中してます?」 「……うるさい……」 「顔、めっちゃ赤いですよ」 「うるさいってば……!」 私が顔を伏せると、橘がすっと距離を詰めてきた。 「先生、ちゃんと取材しないと、いい作品作れませんよ?」 「……は?」 「ほら」